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おそば屋さんに行って来た


昨年夏、突然某建設会社から電話が掛かって来た。

私の仕事柄、どう転んでも縁のない職種の会社からだったので、

恐る恐る話を聞いていたら、どうやら新規事業で蕎麦屋さんを展開する事になり、

その店舗の看板と内装の絵が欲しいと言う話だった。

いったいどこから私を見つけたのか…と思ったら、

10年近く連載している「VISA」の『SHOWAの風景』というページを見て下さって

いたらしい。

絵を描き、納品すると言う一連の作業しかしていないと、どこでどんな方が

見て下さっているかと言う事を、つい忘れがちになってしまう。

私はアーティストではないので、クライアントさんの要望に添う様に

絵を描いている。

本当はもっとああしたいこうしたいと、自分の色を出したいところなのだが

仕事となるとそうもいかず、締め切りを守る事を一番に描いている。

自分の手から離れ、どんな風に仕上がってくるのか、

気にはなりつつも、色校もない広告や雑誌のページには

思った様な仕上がりを期待する事も難しいと言う事が

体験的に分かってくると、私の中で諦めムードが先行してしまう。

それは決して誉められた事ではない。

私がアーティストに向かない理由がそこにもある気がする。

話が逸れてしまったが、新規事業の看板の絵と言うのは

私にとっては未知の仕事で、建設会社の社長と担当者さんとで

話をしたが、私には建築などさっぱりわからず、先方も

絵を発注などしたことがない、お互い「ド素人」同士の

打ち合わせとなった。

先方は建物のパースとだいたいの絵のサイズと締め切りだけを提示し、

後はお任せします。。。というだけのアバウトな打ち合わせで終了。

内装に使用する絵はスクリーンに転写し、店内のしきりとして使うという事だった。

店舗はどこでしょう?と尋ねてもその時点では公開出来ない理由があったのか、 「つくば」です…としか教えて貰えず、時間もなかったので、

先方の言うイメージを形にする作業を優先することにした。 オープンの日から逆算すると9月の初旬には仕上げなければならない。

打ち合わせから約一ヶ月強!本当にできるのかな?と心配になりつつも

何とか締めきりに間に合わせる事が出来た!

そして納品が済み、普段通りの仕事をこなす日々を送っていたが、

いつ迄経っても先方から返事がない。 担当者にメールも電話も手紙も書いたが、一切返信なく ヒジョーに不安になってきた。

当初のオープン予定が10月中旬と聞いていたが、

天候不順で工期が遅れているのだろうと思い、 開店準備に奔走しているであろう担当者に遠慮して

極力連絡するのは控えよう…などとヌルい事を考えてしまうのが

私の悪いクセなのだ。 自分の絵がどんな風に使われ、どんな風に仕上がっているのか 自分の目で確かめたいだけなのだが、工期が遅れている建設現場では

そんな事はきっとどうでもいいことなのだろう。

当初のオープンの日程も過ぎ、個人的な事でゴタゴタしていた11月中旬に

メールが届いた。「オープンは11月25日です」

えぇ〜っ!来週!?急だし、当初のオープン予定から1ケ月も後なら、

もうちょっと絵に手を加えたかったなぁ。

そしてやっぱり住所が書いていない。 どこなんだよぉ〜! その後の電話にもやっぱり出ない。メールをしても返信がない。 もうどうなってるんだ〜!!!

しかし今の世の中ネットがある。 検索してみた! あった〜〜〜〜〜!

茨城県つくば市大角豆と言う所だ! オープンしたら御招待しますよ!と言ってたのに! もういい!自分で行く! で、行って来ました。見てきました。 店内の絵はスクリーンではありませんでした。 思っていた仕上がりとはほど遠い感じだったけど、 店内で食べている人が「なんかほっとする絵だね〜」と

素の感想を話していたのが聞けて、「親」としては もうそれだけで十分だと思ってシマッタ次第です。 ここは私の作品を展示する場所じゃない。食事をする所なのだ。と 自分に言い聞かせて帰って来ました。 「丸亀製麺」のおそば屋さんバージョンのようなお店なので、 わざわざ行ってくださいとは言えないのですが、 用事で近所まで行かれたら、一度覗いてみて下さい。

店のドアを開けた所にまず1枚


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